生成AIコラム

第5部 生成AIが導く産業の未来

第5部|第5回:ヘルスケア業界(医療、介護、創薬・製薬、ウェルネス)と生成 AI
2025.1.16
飯田 正仁

三菱総合研究所は生成AI時代の始まりに向け「生成AIラボ」を新設する。それを記念して「三菱総研 生成AIコラム」の連載をお届けする。

※「三菱総研 生成AIコラムシリーズ」はこちら。

はじめに

第1部~第4部で紹介したように、生成AIの導入はビジネスの場で大きな変革をもたらす技術と期待されている。実際に、様々な産業界で生成AIの活用が進みつつある。
第5部では、各産業での課題や生成AIの活用事例、今後生成AIが普及していくためのポイントについて紹介する。
本コラムでは、ヘルスケア業界(医療、介護、創薬・製薬、ウェルネス)について紹介する。

ヘルスケア業界(医療、介護、創薬・製薬、ウェルネス)の背景と課題

ヘルスケア業界(医療、介護、創薬・製薬、ウェルネス)は現在、複数の課題に直面している。
医療、介護分野では、急速な高齢化の進行に伴いサービス需要が急増している。2025年には65歳以上の高齢者が総人口の約30%を占めると予測されており、医療・介護サービス需要は今後も急増する可能性が高い。当社では、医療・介護給付費は今後も増え続け、2040年には約83兆円と、2020年の約54兆円の1.5倍に増大すると推計している。財政負担の軽減は大きな課題であるとともに、緊急時対応が発生する医療・介護現場では長時間労働も常態化しており、医療・介護サービス提供を担う人材不足も懸念される。臨床記録やカルテ記入といった事務作業も、医療・介護従事者の大きな負担となっている。過去の症例など参照すべき業界知識も膨大で、効率的な情報検索や文書作成が求められる。
創薬・製薬分野では、新薬開発の事業リスクが⾮常に⼤きい。新薬開発から発売までの期間は約15年、研究開発費は数百億円〜1千億円以上、基礎研究から新薬が市場に出るまでの成功率は約3万分の1(0.003%)ともいわれており、開発プロセスの効率化と成功率の向上が大きな課題となっている。また、医療、介護分野と同様に、参照すべき業界知識が膨大である。薬剤や規制などの情報検索、治験や薬剤に関する説明文書作成などの効率化が課題となっている。
ウェルネス分野では、生活習慣病の予防やメンタルヘルスの維持など予防医療への関心が高まっている。これに加えて、ウェアラブルデバイスやスマートフォンを活用した健康管理用デバイス機器の普及が進み、個々の生活データに基づいたサービス提供が可能な状況となっている。デバイスから収集されるデータをもとに、従来の画一的なサービスを超えて、ユーザーごとのニーズに合わせた具体的な提案や、パーソナライズされたサービスの提供が求められている。
ヘルスケア業界では、各分野で直面する背景や課題に対応し、個別業務の効率化(BtoB)とユーザーサービス高度化(BtoC)に生成AIが活用されている。医療、介護、創薬・製薬、そしてウェルネスの各分野における生成AI活用事例を見てみよう。
【図:ヘルスケア業界(医療、介護、創薬・製薬、ウェルネス)での生成AI活用状況】
図:ヘルスケア業界(医療、介護、創薬・製薬、ウェルネス)での生成AI活用状況 出所:三菱総合研究所作成

生成AIの活用事例

医療、介護、創薬・製薬、ウェルネスの各分野で、生成AIは新たな解決策を提供している。医療・介護、創薬・製薬では主に業務支援・効率化(BtoB)に、ウェルネスでは主にユーザーサービス高度化(BtoC)に、生成AIが活用されている。

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▼このコラムでわかること

医療、介護、創薬・製薬、ウェルネス業界の課題とは?

生成AIによる業務支援/効率化の具体例

ユーザーサービス高度化を実現する生成AI活用法

<目次>
■はじめに
■ヘルスケア業界(医療、介護、創薬・製薬、ウェルネス)の背景と課題

(限定ページ)

■生成AIの活用事例
 【業務支援・効率化(BtoB)】
 ・医療、介護分野における生成AI活用
 ・創薬・製薬分野における生成AI活用
 【業界特化LLM、プラットフォーム提供(BtoB)】
 【ユーザーサービス高度化(BtoC)】
 ・ウェルネス分野における生成AI活用
■まとめ
  1. 内閣府 令和6年版高齢社会白書(全体版) 1 高齢化の現状と将来像
    https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2024/html/zenbun/s1_1_1.html(閲覧日2024.12.2)
  2. 東洋経済オンライン 2024/11/27 三菱総合研究所 医療・介護制度改革のカギは「データ共有」にあり データ利活用で実現する社会像を具体的に描く
    https://toyokeizai.net/articles/-/835712(閲覧日2024.12.2)
  3. 医業に従事する医師(勤務医)については、2024年4月から時間外・休日労働の上限規制が適用され、原則として年間960時間以下/月100時間未満とされている。
  4. 厚生労働省 2020年10⽉27⽇ 第1回 医薬品開発協議会 資料2-5
    https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/iyakuhin/dai1/siryou2-5.pdf(閲覧日2024.12.2)

筆者

筆者 飯田 正仁 株式会社三菱総合研究所 デジタルイノベーション部門 生成AIラボ
飯田 正仁
株式会社三菱総合研究所
デジタルイノベーション部門 生成AIラボ

学生時代はOR・数理工学を専攻、現在はAI・XR・量子など新しい技術の最新動向や社会に与える影響を調査研究しています。身近なところに最新技術のある子供たちが、将来どんなふうに成長していくのか、とても楽しみです。

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