インテリジェンス基盤

事業環境変化への適応力向上

<第1回> 事業環境変化への適応に向けたインテリジェンス機能の組織への実装

2025.5.26
髙萩 昭範

近年、目まぐるしい環境変化に対応し成長することが企業に求められる中、外部情報を迅速に収集し、意思決定に生かすインテリジェンス機能の重要性が増しています。当社の支援事例を踏まえ、インテリジェンス業務を推進する際のポイントを、連載コラム「インテリジェンス基盤」としてお伝えします。

■連載コラムでわかること(予定)

  • 第1回:インテリジェンス機能とは何か
  • 第2回:AIにより高度化するインテリジェンス機能
  • 第3回~:企業の課題解決に向けたインテリジェンス機能の活用

※各記事のテーマは変更となる可能性がございます。あらかじめご了承ください。

先行きが不透明な今の経営環境の中で、こんなお悩みはありませんか?
「毎日流れる様々なニュースが、自社にどのような影響をもたらすのか、すぐに把握できない…」「取締役会や投資家に対して、明確かつ迅速に説明できる情報が不足している…」
特に、トランプ大統領の再任やウクライナ情勢、台湾有事、生成AIの急激な発展といった複雑な要素が絡み合う現代では、これまでのように社内外からレポートが届くのを待つだけの体制では、情報把握が後手に回ってしまいます。
こうした課題を解決するために必要なのが、「インテリジェンス機能」です。
インテリジェンス機能を導入することで、変化する環境をリアルタイムで捉え、自社への影響を迅速に分析、経営の意思決定にタイムリーに反映させることが可能になります。社内はもちろん、取締役会や機関投資家など、社外のステークホルダーへの説得力ある説明もスムーズになります。
いまこそ、受け身から能動的な情報収集・分析体制への転換が求められています。

インテリジェンス機能とは何か?

企業が成功を収めるためには、市場や競合の動き、技術進化、地政学的リスクなど、常に変化する外部環境を迅速に把握し、経営判断に生かす必要があります。「インテリジェンス機能」とは、このような社内外の情報を戦略的に収集・分析し、的確な意思決定をサポートする仕組みのことです。

インテリジェンス機能を持つべき3つの理由

多くの企業は、以下のような課題を抱えています。
  • 突発的な大きなニュースが発生した際、自社への影響を素早く把握できず、経営判断が後手に回ってしまう。
  • 中期経営計画が環境変化に追いつかず、見直しが遅れることで戦略の有効性が低下する。
  • 重要市場の市況予測が複雑で手間がかかり、十分に取り組めていない。
【図表:外部環境に関わる経営課題の例】
出所:株式会社 三菱総合研究所
こうした問題を解決するには、変化をリアルタイムに検知・分析し、常に最新の状況を経営戦略に反映できる柔軟な体制が不可欠です。

インテリジェンス機能の組織的実装方法

インテリジェンス機能を効果的に導入するためには、まずは業務プロセス、次に情報収集・分析の仕組という順に検討を進める必要があります。インテリジェンス業務の目的や役割の検討を経ず情報収集しても、意思決定に役立つ分析やレポーティングはできません。また、外部環境の変化をリアルタイムに察知し、迅速に分析・評価できるようにするためには、自社にとって重要な環境変化と自社事業との関係性を予め体系的にとらえておく必要があります。三菱総合研究所ではこの体系を「テーママップ」と呼び、情報収集・分析設計の入り口段階で必ず作成します。
【図表:インテリジェンスの仕組み構築】
出所:株式会社 三菱総合研究所
【図表:目的の代表例】
出所:株式会社 三菱総合研究所

「テーママップ」で外部環境を体系的に捉える

テーママップを導入すれば、「ニュースが発生しても、その影響がすぐに把握できない」「対応が遅れ、リスクが拡大してしまった」というお悩みを解消することができます。
テーママップは、企業が直面する可能性のある環境変化を、次の3つの階層で体系的に整理・視覚化します。
  • 第1階層:マクロ環境動向 政治・経済・社会・技術(PEST)など、企業が注視すべき大きなトレンドを明確に整理します。
  • 第2階層:事業影響のシナリオ 第3階層に影響を与える可能性がある、将来の世界観を示すテーマ。楽観シナリオ、悲観シナリオ、現状維持シナリオの3つのケースで整理します。
  • 第3階層:経営・事業への直接的影響 実際に企業が具体的に何をすべきか明らかにするために、直接的な経営・事業へのインパクト要因を特定します。
【図表:テーママップ例】
出所:株式会社 三菱総合研究所
テーママップを活用すれば、経営陣が迅速かつ的確に状況を把握し、質の高い意思決定を素早く行えるようになります。

インテリジェンス機能が企業の意思決定を変える

インテリジェンス機能を効果的に組織に実装すれば、外部環境の変化をリスクとしてだけでなく、戦略的な機会として活かすことが可能になります。テーママップの活用により、「何の情報をどのような目的で追跡すべきか」が明確になり、企業の意思決定の質とスピードが大幅に向上します。
三菱総合研究所では、官公庁や民間企業のインテリジェンス機能構築を長年支援しています。激動の時代を勝ち抜くために、ぜひインテリジェンス機能の実装をご検討ください。

筆者

髙萩 昭範
株式会社三菱総合研究所
ビジネス&データ・アナリティクス本部 特命部長

外資系コンサルティング会社およびテック系スタートアップ経営者を経て、三菱総合研究所に入社。
顧客企業に対し、AI技術を活用したインテリジェンス基盤の導入を支援しています。
特に、全社的な経営課題の解決や事業成長に向けたAI活用、および新規事業の創出・グロースを強みとしています。