生成AIコラム

第5部 生成AIが導く産業の未来

第5部|第1回:金融(銀行・保険・証券)業界と生成AI
2024.5.30
飯田 正仁

三菱総合研究所は生成AI時代の始まりに向け「生成AIラボ」を新設する。それを記念して「三菱総研 生成AIコラム」の連載をお届けする。

※「三菱総研 生成AIコラムシリーズ」はこちら。

はじめに

第1部~第4部で紹介したように、生成AIの導入はビジネスの場で大きな変革をもたらす技術と期待されている。実際に、様々な産業界で生成AIの活用が進みつつある。
第5部では、各産業での課題や生成AIの活用事例、今後生成AIが普及していくためのポイントについて紹介する。
本コラムでは、金融(銀行・保険・証券)業界について紹介する。

金融(銀行・保険・証券)業界の社内業務効率化への生成AIの活用

金融(銀行・保険・証券)業界は、特に生成AIの活用が進んでいる業界の一つである。
2016年から続いていたマイナス金利政策や低金利環境の継続により、業界では資金運用による収益性を得にくい低収益性の状況が続いていた。さらに、地方銀行の再編やネット型取引の拡大、フィンテック業界の台頭なども業界内の競争を加速させている。コロナ禍を機にデジタル化が進展し、若年層含め顧客の多様なニーズにも対応する必要がある。
これら業界をとりまく状況に対して、まず社内業務の効率化が喫緊の課題となっている。
金融(銀行・保険・証券)業界は、社内規定や事務手続を定めた膨大な文書や、外部情報を参照する機会が多い。これらの膨大な情報をもとに、社内外向けに文書を作成する機会も多い。バックオフィス業務に関しては、膨大な情報の参照・読解、文書作成、他業務の時間創出といった課題を解決する手段として、生成AIが活用されている。
三大メガバンクグループの一つ三菱UFJフィナンシャルグループでは、セキュアな環境で行内利用が可能な生成AI「MUFG版ChatGPT」を導入し、稟議書作成やレポート要約、行内の手続照会などに活用している。東京海上日動火災保険も同様に、社内向けの生成AI「One-AI for Tokio Marine」を導入し、資料作成や検索、議事録・レポート要約などに活用している。大和証券でも、同様のセキュアな環境下で情報収集や資料作成、プログラミングの素案作成やアイデア創出などに生成AIが活用されている
他にも多くの企業で、バックオフィスの社内業務効率化を図るためのツールとして生成AIが活用されている。生成AIは、膨大なデータから言語や画像、音声などの有用な情報を抽出・処理したり、新しい情報を作り出したりすることができる技術である。例えば、RAG(Retrieval Augmented Generation)のように生成AIが各種情報を利用しながら回答を生成する仕組みを構築すれば、適切な情報から適切な回答を得ることが可能となる。膨大な情報を扱う機会が多いため、社員のバックオフィス業務の負荷を大幅に軽減し、業務効率化につなげることができる。
フロントオフィス業務に関しては、多くの企業で顧客からの問い合わせ対応にチャットボットが活用されている。24時間365日対応可能なチャットボットは、窓口業務の負担軽減による業務効率化だけでなく、顧客の待ち時間削減、顧客との接触機会の拡大による収益性改善も期待できる。問い合わせ時には、チャットボットまたは有人の専門オペレーターどちらかを選択できるタイプが多い。顧客は自分の状況や知識レベルに合わせてチャットボットとオペレーターとを選択し、好きなときに速やかにサービスを利用できる。コロナ禍を機に、非対面のサービスが一般に浸透しつつある。チャットボットは、ネット銀行はじめインターネット型のサービスとも親和性が高い。ChatGPTを活用した金融アドバイスサービスの事例もある 。今後、有人オペレーターとの役割を分担したうえで、チャットボットと生成AIが組み合わされたサービスは一般的になっていくと考えられる。
バックオフィス業務、フロントオフィス業務での社内業務効率化からさらに進んで、顧客へのサービスの高度化、新しいビジネスモデルでも生成AIの活用が進んでいる。
以下、各業界での活用事例を見てみよう。
【図表:金融(銀行・保険・証券)業界での生成AI活用状況】
図表:金融(銀行・保険・証券)業界での生成AI活用状況 出所:株式会社 三菱総合研究所

銀行業界と生成AI

銀行業界は、社内業務の効率化だけでなく、長寿化や様々なライフスタイルに伴う顧客ニーズ多様化への対応という課題も抱えている。多様な顧客のニーズに対応するため、既存サービスの高度化や新しいサービスの提供に生成AIを活用するケースが増えている。
七十七銀行では、銀行商品の販売状況やチャネル別分析業務へ生成AIを活用する実証実験を実施している。社内外の膨大なデータから市場動向や顧客動向を予測・分析したり、戦略を最適化したりすることは、生成AIの得意とするところである。

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▼このコラムでわかること

なぜ金融業界では生成AIの活用が進んでいるのか?

オフィス業務を効率化する生成AIの活用ポイント

銀行・保険・証券業界での生成AI活用事例

  1. MUFJについて 2023.09.04 MUFG版「ChatGPT」の開発秘話 DX化を加速させる新たなオープンイノベーション
    https://www.mufg.jp/profile/strategy/dx/articles/0112/index.html(2024年4月12日閲覧)
  2. 東京海上日動火災保険株式会社 2023年10月12日 全社員向け生成 AI “One-AI for Tokio Marine”の活用開始 ~ChatGPT による業務効率化を実現~
    https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/company/release/pdf/231012_01.pdf(2024年4月12日閲覧)
  3. 大和証券 2023年4月18日 大和証券における全社員の ChatGPT 利用開始について
    https://ssl4.eir-parts.net/doc/8601/tdnet/2263460/00.pdf(2024年4月12日閲覧)
  4. 例えば以下のようなサービスがある。
    みずほ銀行 みずほチャットサポート
    https://www.mizuhobank.co.jp/help/chatsupport/index.html(2024年4月12日閲覧)
    三井住友銀行 チャット受付サービス
    https://www.smbc.co.jp/kojin/direct/service/chat/(2024年4月12日閲覧)
  5. MILIZE ニュース 2023年3月28日 MILIZEがChatGPTを活用した次世代金融アドバイスサービス「MILII TALK(β版)」を提供開始
    https://milize.co.jp/news/20230328_5155(2024年4月12日閲覧)
  6. 七十七銀行 News Release 2023年11月10日
    https://www.77bank.co.jp/pdf/newsrelease/23111001_ai.pdf(2024年4月12日閲覧)

筆者

筆者 飯田 正仁 株式会社三菱総合研究所 デジタルイノベーション部門 生成AIラボ
飯田 正仁
株式会社三菱総合研究所
デジタルイノベーション部門 生成AIラボ

学生時代はOR・数理工学を専攻、現在はAI・XR・量子など新しい技術の最新動向や社会に与える影響を調査研究しています。身近なところに最新技術のある子供たちが、将来どんなふうに成長していくのか、とても楽しみです。

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